マリッジリングを目指す
見ると、ジュエリーショップは、それらのほとんどに出店可能であり、実際出店している。
これからもっとも増えると予測されている近隣型シヨツピング・センターに、ジュエリーシヨップがどこまで適合できるかはわからないが、釣具店にインポート・ジュエリーが並び、ジュエリーのないディスカウンターがないまでになってしまった現在、すべての商業施設を出店可能候補店としてチェックしていくことは、不況脱出の最重要戦略のひとつとして位置付けられなければならないだろう。
女性のジュエリー平均所有個数が10.6個に上り、ユーザーの中にある種の飽和感が漂い始めている。
そこから、新製品の販売よりも、リフオーム提案に重心を移したほうが、顧客の反応をつかみやすいのではないかという推測が生まれる。
実際、ある調査によると、女性の半数以上がリフォームに対して肯定的な反応を示している。
ジュエリーのリフォームが直面するいくつかの問題が解決されれば、リフォーム需要がもっと顕在化し、製品販売に匹敵する市場規模に成長する可能性もある。
そこで、リフォームの大きな問題点を整理すると、大体以下のようになる。
@顧客が要求するデザインの要望を把握し、プレゼンテーションし、決定するシステム。
Aコスト見積り。
B工程管理スケジュール。
C対応する販売員のコンサルティング力。
D預かった商品(特にルース)の同一性の保証。
これらの中で、顧客が要求するデザインの要望を把握し、プレゼンテーションし、決定するシステムについては、空枠を使ったり、フォーム対応のパソコン一体のソフトが現在2種類販売されており、顧客のかなりのデザイン要望にも対応できるようになってきている。
空枠をベースに使うため、デザイン・バリエーションには限界があるが、一部の仕様変更も可能であり、それよりもリフオーム・コストが割安になるのが魅力である。
また、パソコンの指示にもとづいて、顧客の要望を聞き出していくため、販売員の対応力不足もかなりカバーしてくれるコスト見積りとコスト工程管理スケジュールについては、マニュアルにもとづいて対応すれば自然と出来るようになる。
こう見ると、だったらもっとリフォーム需要が顕在化してもいいのではと思えるが、現実はそれほど広まっていない。
その主な理由は、肝心の消費者サイドに、ジュエリーのリフォームという概念自体がまだ定着していないことがあげられる。
ジュエリーショップからのリフォーム情報発信も少なく、一般の女性雑誌でも新製品情報ほどリフォーム情報は流されていない。
その辺がカバーされれば、急速に広がる可能性もある。
「アフリカのサバンナで、ライオンはいつもシマウマや小動物を食べあさるわけではない。
まず彼らが戦うのは、自分の生存を脅かす動物、例えば自分たちが狙っている動物を同じように狙ってくるハイエナであったりする」。
こういう比峨をとおして、弱肉強食という論理は必ずしも正しくはなく、弱いものがいつも強者に負けるわけではない、小売店の競争においても、同じターゲットを狙わなければ、小型店は大型店と共存できる、とする説が出てきた。
たとえばジュエリーショップの場合、ある大型店がコイン・ペンダントの品揃えを強化し、価格も原価ぎりぎりとしか思えないような安さで打ち出してきたとき、小型店はさっさとコインペンダントからは撤退し、もっと粗利が取れる付加価値商品で勝負した方がよいという考えである。
そうすれば、大型店も手を出して来ず、両者並び立つことが出来ると。
これを「共生論」という。
この説は、これからのマーケティング戦略を考える上で、興味深い。
大必ずしも強くなく、小よく大を倒すというわけである。
しかし、この説は必ずしも全部当たっているわけではない。
というのも、大型店というのは基本体質として拡大志向を持っており、最初見逃してくれても、その小型店があるカテゴリーで儲かっているという情報を掴めば、大型店は必ずそのカテゴリーで挑戦してくるからである。
大型店が大型店になりえたのは、そういう挑戦を絶えず実行してきたからである。
そういう意味で、小型店にとって、絶対安全地帯というのは、じつは存在しない。
しかし、小型店が生き残るために、逃げるのではなく、違う価値を持った商品をしっかり揃えて行けば、そこに可能性は出てくるということだ。
先のコイン・ペンダントのカテゴリーでいえば、そのカテゴリーから逃げてしまうのではなく、自店が勧められるモデルを選択し、そのモデルについては大型店と競争できる価格と品質を確保する。
そうして、その優位性を顧客にしっかりアピールしていけば、そこに勝てる可能性は出て来るということであろう。
そこでポイントになるのは、小型店なりのきめ細かなマーチャンダイジング戦略である。
大型店には出来ない、小型店だからこそ出来る、顧客のメリットになるマーチャンダイジングを作ることが勝敗を決する。
売り上げ不振が続くと、「HOWTO本」が盛んに読まれ、経営者も「売り方の工夫が足りない」と社員の尻を叩く。
それが、まったく的はずれでないこともあるが、しかし今気付かなければならないことは、最近の消費不況の大きな理由が、「欲しい物がある程度揃い」、「普通のものでは満足出来ず」、しかも「特定の物、店にこだわらない」という消費者の行動に起因していることである。
日本経済新聞は、こうした最近の消費者像を「無党派消費者」と名付け、無党派の取り込みが勝負の趨勢を決すると予言している。
つまり、これから問われているのは、「どう売るか」ではなく、ある程度の物を持ってしまって、高度な選択眼を持つに至った消費者が納得できる「何を売るか」、「何を提案するか」なのである。
「HOW」ではなく「WHAT」が問題なのである。
もともと商売は「何か」を売ることから出発しているのだから、これはそもそもの出発点と言えるかもしれない。
ただ、今問われているその「何か」は、もっと高レベルの「何か」であり、それがない限り、その店の今後の繁栄がないと思わなければいけないということだ。
最近、宝石店でよく耳にする「店頭売り」が落ち、「展示会売り」や「催事販売」でしか売れなくなっているという指摘も、店頭に、顧客が欲し、探している「何か」が無くなっているからと受け止めなければならない。
では、その「何か」は、どうしたら見つけることが出来るのか。
それが、マーチャンダイジング、すなわち「顧客が欲しいと思っている商品を発見し、店頭化し、提供する戦略」によって可能になるということである。
いま販売不振に悩んでいる宝石店は、自分の店に商品はあっても「マーチャンダイジングがない」と思わなければならない。
最大の問題は、そこにある。
ジュエリービジネスでは、この分野が放置され、具体的な方法論が確立されなかったことが、ジュエリー企業の経営基盤を脆弱にし、また、不況感をさらに強め、深刻なものにしてきていると思われる。
ジュエリービジネスが確実なビジネスとして自立するためには、このマーチャンダイジングについての方法論を確立し、それをマスターすることをおいて他にないと言い切っても良い。
バブル崩壊後も好調を持続しているジュエリーショップに共通するのは、このマーチャンダイジングが確立していることである。
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